2017年1月17日火曜日

イノシシにのる摩利支天


摩利支天は、日天の眷属。日天はバラモン教の太陽(日輪)を神格化した神で、後に仏教に取り入れられ、観世音菩薩の化身といわれうようになった。

摩利支天は陽炎を神格化した神。陽炎は実体がないので捉えられず、焼けず、濡らせず、傷付かない。隠形の身で、常に日天の前に疾行し、自在の通力を有すとされる。

日本では中世以降に信仰を集めた。戦場の護神として武士や忍者が信仰し、江戸時代には蓄財福徳の神として大黒天や弁才天とともに人気があった。

楠木正成は兜の中に摩利支天の小像を篭めていたという。また、毛利元就や立花道雪は「摩利支天の旗」を旗印として用いた。山本勘助や前田利家や立花宗茂といった武将も摩利支天を信仰していたと伝えられている。禅宗や日蓮宗でも護法善神として重視されている。

日本の山岳信仰の対象となった山のうちの一峰が摩利支天と呼ばれている場合があり、その実例として、木曽御嶽山(摩利支天山)、乗鞍岳(摩利支天岳)、甲斐駒ヶ岳があげられる。

「日本三大摩利支天」は①金沢の宝泉寺、②東京の上野アメ横の徳大寺、③京都建仁寺の塔頭禅居庵である。真言宗、日蓮宗、臨済宗と宗派はバラバラで、像の形もバラバラだが、それぞれに摩利支天に関する独自の由緒がある。

摩利支天は、インドの暁の女神であるウシャスであるともいわれている。摩利支天は、インドの暁の女神であるウシャスであるともいわれている。

『リグ・ヴェーダ』はインドの古い古いヴェーダ聖典群のうちのひとつ。口伝での成立は紀元前15世紀から紀元前13世紀と考えられている。「リグ」は「讃歌」、「ヴェーダ」は「知識」を意味している。全10巻で、1028篇の讃歌(うち11篇は補遺)からなる。讃歌の対象となった神格の数は非常に多く、原則として神格相互のあいだには一定の序列や組織はなく、多数の神々は交互に最上級の賛辞を受けている。

ウシャスは、インド神話における「暁紅の女神」で、夜明けの光を神格化したもの。天空神ディヤウスの娘で、夜の女神ラートリーの妹。太陽神スーリヤの母あるいは恋人といわれる。『リグ・ヴェーダ』に登場する女神の中では最も多くの讃歌を持ち、独立讃歌は20を数え、ラートリーのほかに、スーリヤ、アグニ、アシュヴィン双神と結びつけられている。

美しい女神であるウシャスは、太陽神スーリヤの先駆であり、闇を払い、あらゆる生命を眠りより覚まし、活動を促す。また、ウシャスは赤い馬もしくは牛の牽く車に乗り、後を追うスーリヤが彼女を抱きしめると消滅するが、翌朝には、天の法則(リタ)に従い、方角を誤らず、再び美しい肌を現すとされる。

摩利支天(マーリーチー)は、ヴィシュヌのへそに芽生えた蓮から生まれた創造神ブラフマー(梵天)の子だといわれる。イラン神話の英雄神ウルスラグナ(バフラーム)もまたヴィシュヌのようにイノシシに姿を変えて光明神ミスラを先導したといわれている。

摩利支天の持物(アトリビュート)は針と糸であるとされる。『大摩里支菩薩経』によると悪口や讒言を縫い込めるための道具であると説かれており、そこには懲罰者としてのイメージが投影されている。弓矢は暗黒を引き裂いて光明をもたらす象徴とも解釈されている。

「猪突猛進」と言われるが、それは一直線に突き進む意志の強さを意味する。

猪の肉は、万病を防ぐと言われ、無病息災の象徴とされている。

猪には雨が降るのを予知する力があるといわれている。


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