2016年8月9日火曜日

コウノトリ・ナベヅル徳島フォーラムの報告①


●徳島県内の環境団体が集まり、フォーラム実行委員会を発足し、まずはコウノトリやナベヅルの現況を多くの方に知ってもらい。将来的には人間と水鳥が共生できる社会をつくっていくことをめざして、その布石となるような集まりを開催することとなった。

●7月2日(土)の午後に、徳島市ふれあい健康館1階ホールにて開催。
●開催費用を、以前より吉野川汽水域の自然環境保全に関心の高く、支援を続けていただいているパタゴニアより助成していただいた。

●まずはじめに、現地徳島の現状の報告を日本野鳥の会徳島県支部の三宅さんが行てくれました。

徳島県には35年間のナベヅルの飛来記録があり、それを吉野川下流徳島市・吉野川中流阿波市・那賀川・海部川の3つの河川に分けてグラフにして飛来数をわかりやすく報告してくれました。年々、飛来数が増えていること、ここ1、2年は特に多いことがわかります。
古い記録では、1996年徳島市川内町で越冬。2003年に徳島市春日町で越冬している。
ナベヅルは四国に入った後、西へ向かうか、四国の中をぐるぐる飛び回っている
それは落ち鮎漁をする人、狩猟をする人から逃げるため。
またはエサとしての落ち鮎を探したりして飛んでいる。

2015~2016年にかけてはたくさんのナベヅルがやってきた。
海部川に230羽が飛来し、越冬せずに、和歌山から三重へ飛び去った
越冬数は吉野川の善入寺あたりで35羽(3月17日北帰)、
那賀川の中洲で35羽(3月18日北帰)

ナベヅルの越冬地の条件は3つ。その条件に合う場所が徳島県には多い。
①安全な塒(ねぐら)となる大きな河川の中洲がある。狩猟の影響を受けにくい。吉野川は大きく落ち鮎漁の影響も少ない。
②圃場整備されていない小さな田んぼが健在。
③有機水田が増えている。用水路や側溝にも生きものが多い。

コウノトリについてはほとんどすべてが放鳥されたもので、個体識別できる足環がついているので詳細な記録がとられている。
2013年から毎年、数羽がやってきている。内訳は豊岡放鳥16羽・野田放鳥1羽・大陸からやってきたもの1羽。
昨年、鳴門市大麻町の電柱に巣が作られた。豊岡周辺以外では、初めてのことで、ヒナの誕生が待たれるが、まだ親鳥自体が若い鳥なので、今後に期待。
鳴門の大麻というところに巣をつくったのは、そこにエサとなる生きものが多いから、巣の周辺はハス田が広がるレンコンの一大産地で、湿地としての生態系がたくさん残っている地域。外来種ではあるがアメリカザリガニ・ウシガエルなどをコウノトリは好んで食べている。



●メインとなる講演を2つ。

●演題:「コウノトリ・ナベツルの生態と習性について」
●講師:金井裕氏(日本ツル・コウノトリネットワーク代表)

●講演要旨メモ
 1.コウノトリ・ナベヅル・マナズルの紹介
大きさは1mほどもある大型種・生息地はアムール川の南北・越冬のために秋に日本に飛来し、春に帰郷する。江戸時代はお殿様に保護されていた。

2.コウノトリの野生復帰の現状
兵庫県豊岡市・千葉県野田市・石川県越前市で放鳥している。

3.山口県周南市八代のナベヅル保護の実態
デゴイの設置・人の気配を感じさせないように夜明け前の給餌などを実施
平成元年の越冬数65羽、その後減り続け、現在の越冬数20羽ほど

4.鹿児島県出水のナベヅル保護の実態
ナベヅル13000羽・マナズル3000羽・給餌をしている。

5.ナベヅルの出水への集中化の問題
①ナベヅルによる農業被害→1万羽を超えたあたりから出始める。
②伝染病による大量死の可能性→台湾や韓国で野鳥の大量死が起きている。

6.ナベヅルの保全に必要なこと
①開けた見通しの良い場所→広い水田を好む
②餌場→二番穂・落ち穂・水のある用水路や浅い水域
③ねぐら→水深が15~30cmの浅い水域

7.ツルの保全の妨げになるもの
①冬季作物への食害→対策として被害軽減対策をつくり実行する。
②カメラマン・農作業・工事・通行車両→対策として目隠し・マナーの普及教育の充実。
③電線→対策としてマーキングして目立つようにすることで衝突を回避。

8.コウノトリ・ツルの食べ物と採食行動について
①コウノトリ・ツルの共通の食べ物→ドジョウなど魚・貝・イナゴなどの昆虫・カエル・ヘビ・トカゲなどを食べる。
②コウノトリ→肉食なので単独行動。狩りはへたくそで、バタバタしている。
③ツル→家族単位で群れをつくるので、集団で摂取しやすい植物の種子や根を主食とする。フンの調査から、特にイネの種子を多く食べていることが分かっている。

9.水田と周辺環境の多様性の重要性
水辺のエコトーンの重要性。水辺だけでなく、屋敷林やカヤ場なども重要。里山・里地の自然生態系の多様性が

10.ナベヅルの飛来数・越冬数の増加

11.ナベヅル保護への四国の課題



●演題:「田んぼ生物多様性向上10年プロジェクト行動計画について」
●講師:呉地正行氏(ラムネットJ共同代表)

●講演要旨メモ
1.田んぼの生物多様性を守る10年プロジェクトとは
田んぼの湿地としての機能を活かし生物多様性を向上させることを目的としている。

2.冬水田んぼによる湿地環境の復元の事例
具体例として「蕪栗沼と周辺水田」をラムサール登録湿地にできたことの紹介
冬水田んぼが生物多様性にどのように貢献しているのかの調査報告

◆冬水田んぼの3つの効果
①水辺の生きもの→生息環境の復元
②新しい農法の可能性
③農業と自然との共生をめざす取り組み→持続可能性と環境負荷軽減

◆従来の社会:カモと人間の対立→新しい社会:ガンと人間の共生
マイナスを減らしプラスを生み出す取組
①食害補償条例の制定
②ラムサールブランドのお米作りと販売戦略

3.生物多様性を活かした未来の農業のあり方
新しい農法の開発だけではなく、水田の構造改革も必要である。
蕪栗沼の周辺水田の構造改革事業において、「ふゆみずたんぼ米」をつくるのに適した圃場整備を行った事例の紹介。通常なら排水路の深さを深くするところを、冬期湛水しやすいように浅くしたり、護岸をコンクリートではなく、板張りにしたりした。

4.水田にはつなぐ力がある。
里山・里地・湖沼・干潟・河川の生きものを水田は湿地としての機能があるのでつなげることができる。

5.わたしたちの暮らしの中に、「生きもののにぎわい」はなぜ必要か?
命を食べて、命をつないでいるという事実の見直し。
人間はさまざまな生きものと実は深い関係にあることの再認識が必要。

6.アジアでは田んぼの生物多様性は実際に食文化を支えていることの紹介
①魚米の郷とよばれる長川河口の太湖の南東。お米と魚が獲れる豊かな食文化の自然豊かな地域
②カンボジアのカンポントム県で利用されている田んぼの生きもの。(魚類:70種類・爬虫類:8種類・両生類:2種類・甲殻類:6種類・軟体動物:1種類・昆虫類:2種類・水生植物:13種類)
③ラオスの家庭で消費される動物質の食材のうち、3分の2は田んぼで収穫されている。食卓にのぼる魚類の半分・貝類の半分・両生類の半分が田んぼで収穫されたもの。


●200人入る会場はほどんどの席が埋まり、盛況であった。

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