蒲生俊敬著『日本海~その深層で起こっていること~』2016年、講談社ブルーバックスより
黒海の出入り口はボスポラス海峡(水深35m)のみ。最大深さは2250m。
日本海の出入り口は間宮海峡(水深10m)、宗谷海峡(水深50m)、津軽海峡(水深130m)、対馬海峡(水深130m)の4つある。最大深さ3796m。
黒海の場合、水深150mよりも深い部分は、有機物の分解のために酸素が消費しつくされて、酸素濃度はゼロ。無酸素の水中では、有機物の分解のために硫化イオンが使われ、副産物として猛毒の硫化水素が発生する。
日本海と黒海の違いは、日本海には塩分濃度の高い対馬海流が絶えず流れ込んでいて、これが冷やされることで、重たくなり、深海まで沈み込み、深海で対流をつくり、沈み込んだ量だけの深層水が、玉突きのように、表層に湧きあがってきている循環が起こっている。このために、日本海は閉鎖海域であるにも関わらず、深層が無酸素になることはない。表層水の沈み込みはウラジオストック沖のピヨートル大帝湾で、深層水の湧きあがりは大和堆のあたりと考えらえている。表層を流れる対馬海流は2ヵ月かけて日本海を北上するが、深層の対流は100~200年かけて循環している。
日本海の深海の対流は、日本海盆、対馬海盆、大和海盆でそれぞれ反時計回りに対流している。
今から2万年前の氷河期には、対馬海峡は陸となってしまい、朝鮮半島と日本列島は陸続きになってしまった。このときは対馬海流が流れ込んでいなかったために、日本海の深層は無酸素状態になり、死の海になってしまっていたことが地層の調査からわかってきている。日本海が豊かな海となったのは対馬海流が流れ込み始めた8000年前から。
アメリカの海洋科学者のウォーリー・ブロッカーは地球規模の表層水と深層水の循環を「ブッロカーのコンベアーベルト」として概念図として示している。大西洋の北の果て、グリーンランドの近海やラブラドル海で、高密度の海水が深層に沈み込み、大西洋を南下し、南極大陸にあたり、東へ流れ、南極低層水となり、インド洋の北と太平洋の真ん中の二ヶ所で、玉突き現象によって湧き上がっている。この循環には1000~2000年くらいかかっている。この海水の循環が、海の深いところにも酸素を運んでいるため、深海にも生きものが生息している。深層海はどこでも、表層水の50%以上の酸素を含んでいて、無酸素のところはない。もし、この循環がなかったら、地球の海の深層は、有機物の分解のために酸素がすべて使われて、黒海のような無酸素状態の死の海になってしまうと考えられている。
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