2016年10月15日土曜日

座禅をすることには、どのような効果があるのか?

座禅をすることには、どのような効果があるのか?

◆マインドフルネスがブーム

火をつけたのはアップルコンピューターCEOだったスティーブ・ジョブス氏だろうか?スティーブ・ジョブス氏はアップルを創業した直後の1976年に曹洞宗の僧侶である乙川弘文老師禅に「会社を辞めて禅の修行がしたい」と相談したという。それに答えて老師は、彼に「事業をするのも、座禅をするのも同じことだから、事業をしたら」と勧めたという。このとき、禅の修行をしていたら、アップルコンピュータは無かったかもしれない。

座禅や瞑想やヨガなどをベースにした「心のエクササイズ」つまり「心の健康保持のための運動」のことが「マインドフルネス」と呼ばれ、グーグル、インテル、フェイスブック、ナイキなどのアメリカ企業の中で企業内活動のカリキュラムとして定着している。

グーグルで行われている「SIY(Search Inside Yourself)自分の内面の探索」と呼ばれるプログラムの中のエクササイズでは、活動が3つのパートに分けらえている。

パート①は「身体に気づくプラクティス(練習)」。意識を身体に向け、やがて頭の中に考えごとが浮かんできたら、また意識を身体に戻し、さまざまな感覚をありのまま受け止める。

パート②は「呼吸に気づくプラクティス(練習)」。呼吸に意識を向け、パート1と同じようにする。

パート③の「思いやりの心を育むプラクティス(練習)」。その日に楽しい会話をした人を思い浮かべ、相手も「心と身体」を持ち、自分と同じであると自らに語りかける。

マインド(精神)とボディ(身体)を分けるのではなく一体として扱うことが共通している。

このSIYは「心と思考力」を科学的アプローチで強化するプログラムとして、SAP、フォード、LinkedIn、UCバークレービジネススクールなどでも実践されている。心の知能指数(エモーショナルインテリジェンス)における5つの要素(自己認識・自己制御・モチベーション・共感・コミュニケーション)を鍛えることができると考えらえてもいる。日本にもこれを普及する協会が設立されて活動がはじまっている。

◆ぼんやりに潜む脳の活動
NHK、サイエンスZERO(2014年6月22日放送)より

人間の脳は、全体重の2%ほどの重さしかない。

人間が、1日あたり2000キロカロリーを摂取しているとして、脳はそのうちの400キロカロリーを消費している。つまり脳はカロリーの5分の1を使っている。とてもカロリー消費が多い。

しかし、実際に意識的な活動をしているのは、わずか5%で、その他20%ほどが脳細胞の修復と維持のために使われているが、全体の4分の3にあたる部分は、いったい何をしているのか、今まではよくわかっていなかった。

そのよくわかっていない部分の研究が近年、急速に進められている。マーカス・E・レイクル博士(ワシントン大学・セントルイス)は、fMRI(ファンクショナル・エム・アール・アイ)という機器を使って、何らかの課題をしている時に、脳のどの部分の血流が増えるかを調べていた。

脳の血流は一定なので、どこかが増えると、どこかが減ることになる。何かの課題を行い意識が集中すると、後部帯状回と前頭葉内側の活動が低下することがわかり、逆に課題をやっていないとき、つまり意識が集中していないときは、この2つの領域の活動が活発になることがわかった。博士はこの脳が休んでいるときに活動が活発になるこの領域のことを「デフォルト・モード・ネットワーク」と名付けた。

デフォルトとは

後部帯状回と前頭葉内側は、①自己認識(自分自身のことを考える)、②見当識(自分のおかれている状況の把握する)、③記憶(海馬と連携していることがわかっている)

島根県出雲市のヘルスサイエンスセンター島根では、脳梗塞の兆候を調べる脳ドックの健康診断を行っている。

そのときに同時に安静時の脳の血流の状態を調べている。

島根大学医学部では2010年から解析を続けていて、年齢性別バラバラの1000人分のデータを集めて解析した結果、いろいろなことがわかってきた。

解析の方法は、脳を立体的に4000個のグリッドに分けて、同じパターンで働く領域を線で結ぶとう方法で視覚化する。

この解析方法からわかったこととして、50歳以下と70歳以上を比べると、70歳以上では、後部帯状回と前頭葉内側をつなぐデフォルト・モード・ネットワークがなくなってしまっていることがわかった。

遠く離れたところとネットワークを構築することは、それだけで多くのエネルギーがたくさんかかるので、年をとると、コストがかかる遠くとのネットワークをやめてしまうのではないかと考えられている。

また、アルツハイマーの原因と考えらえているアミロイドベータという原因タンパク質が溜まるところとデフォルト・モード・ネットワークの領域が一致していることがわかり。

アルツハイマーの原因は、実は脳の使い過ぎによる疲労であり、アミロイドベータが溜まるのも、使いすぎに起因するのではないかと考えられ始めている。

その証拠に、体の機能は正常だが、物忘れが酷くなったという初期アルツハイマー症状の方の脳を調べると、デフォルト・モード・ネットワークが切れてしまっていることが分かった。

この研究は、精神の病の原因が脳のどのような構造に由来するものかを明らかにしてきつつある。たとえば、

①うつ病は、あるタスク(意識的な活動)をしているとき、通常は減るデフォルト・モード・ネットワークが減らないことが原因。

②統合失調症はネットワークが強くなり過ぎていることが原因。

ということがわかってきた。

現在、数千人規模の研究者でデータベースを作っていて、1日1本の論文が出ているほど研究が盛んにおこなわれている。


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