2017年6月15日木曜日

野菜の抗酸化力とは何か?

野菜から得られる栄養のうち、「抗酸化力」とは何でしょうか?それについて解説します。

1.生きものはみなエネルギーを燃やしている


上の写真、右は人間の手のひら、左は小豆の根。写真は九州大学のHPより。私たちの体は、ホタルの光の1億分の1くらいの光を放っている。バイオフォトンという。生きものはみな、微弱ではあるが光を出している。生きものは炭水化物を燃やして生きるエネルギーとしている。

わたしたちは酸素を使って生きるためのエネルギーを得ている。そのため、わたしたちは酸素がないと生きてはいけない。しかし、酸素は諸刃の剣で、酸素によって、わたしたちの体を構成する細胞は、毎日、ゆっくりと酸化されている。このゆるやかな酸化が細胞の老化、老朽化の犯人でもある。

わしたちが食べた食べ物は、胃腸で消化されて分子にまで分解されて、血液といっしょに細胞へ運ばれ、細胞の中のミトコンドリアの中で水素イオンにまで分解されて、酸素と結合し水になる。このとき水素イオンと反応させるために酸素分子が活性化される。その酸素のうち、およそ0.1%ほどが漏れ出てしまう。これは活性酸素と呼ばれ、これが細胞のタンパク質や遺伝子を酸化させて破壊していってしまう。遺伝子が壊れた場合は正常な複製ができなくなりガン細胞となってしまう。

上の図の上の方が「普通の酸素分子」。下が活性酸素の代表的なものスーパーオキシドラジカルで、原始核の陽子の周りを回る電子が1個足りない。電子が足りないスーパーオキシドラジカルは、周辺の細胞のタンパク質や遺伝子から電子を奪い酸化する。電子を奪われた分子は不安定になり、また周辺の分子から電子を奪うという連鎖反応をお越し、次第に細胞を壊していってしまう。


活性酸素は上の図の12種類が知られている。

2.生きものはみな細胞の酸化防止機能をもっている



酸素が無くては生きていけない生物には、活性酸素を除去するさまざまな機能がある。人体には、上の図のように、①活性酸素の発生を抑制する。②活性酸素を除去する。③細胞の修復・再生する。機能がある。活性酸素を抑制したり、除去したりする上記の物質は「抗酸化物質」とよばれ、ビタミンやポリフェノールなどがある。人間は野菜を食べることで、これらの「抗酸化物質」を得ることができる。

動物は野菜を食べることで「抗酸化物質」を得ることができる。植物である野菜は「抗酸化物質」を自力でつくることができる。


上の図は、活性酸素を除去する酵素である。スーパーオキシドラジカルを過酸化水素に変えるスーパーオキシドデスムターゼにはマンガンが含まれているタイプと、銅‐亜鉛が含まれているタイプがある。過酸化水素を水に分解するカタラーゼには鉄が必要である。活性酸素を除去する酵素に必要なミネラルの供給源も野菜である。


活性酸素を除去する仕組みについては、詳しくは上の図のようになる。野菜を食べると、それに含まれているビタミンやミネラルが「抗酸化物質」として活性酸素を無害な水に分解し、活性酸素による細胞の酸化、老化を防止している。

余談ではあるが、酸素をたくさん消費する生物ほど短命というデータがある。

活性酸素を除去する酵素であるSOD(スーパーオキシドデスムターゼ)が体内にたくさんある生きものほど長寿であるというデータがある。

3.ストレスを受けると細胞を酸化する活性酸素が増える


酸素をつかって生きている限り、避けられない活性酸素。その活性酸素は上の図のようなストレスや外的要因でも増えることが知られている。現在のストレス社会は、細胞の酸化・老化を加速しやすいといえる。

人間の場合、ストレスを受けると臓器に血流が行かなくなり、ストレスが除かれると再び血流がはじまる。この状態が繰り返すと活性酸素が発生しやすくなる。

激しい運動は、酸素をたくさん消費する。酸素の消費量が増えると活性酸素の発生量も増える。

紫外線に当たると活性酸素を発生させる物質が皮膚の下にある。

細菌やウイルスを撃退し排除するために活性酸素を活用しているため、細菌やウイルスの侵入は活性酸素を増やす。

化学物質は活性酸素を増やす。人体に有害な化学物質が体内に入ってきたとき、それを分解し解毒するために活性酸素が活用されている。また、排気ガスはそれ自体に活性酸素が含まれている。

特に体内に活性酸素を多く増やすのがタバコの喫煙。上の図はタバコを吸ったときの人差し指のバイオフォトンの写真。人差し指の先端で活性酸素が増加していることがわかる。

4.野菜の抗酸化力の調べ方



活性酸素を除去する力がある野菜。その野菜の抗酸化力を測定する方法として、DPPHラジカル法というのがある。

DPPHはジフェニルピクリルヒドラジルの略称で、人工的につくられた安定したラジカルで、溶液は黒紫色をしている。これに野菜から抽出した溶液を入れると、野菜のさまざまな抗酸化物が、DPPHを実際に消去するので、DPPHは次第に色が薄くなり、最終的には無色になる。この薄くなっていく色の吸光度を測定し「抗酸化力」を調べることができる。測定には人工的につくったビタミンEであるトロロックスと比較して調べる。

この測定法には弱点が2つある。
①DPPHラジカル法は、水溶性成分に適しており、β‐カロテンやリコピンなど脂溶性成分はあまり抽出されない。栄養価コンテストにおいては、本来抗酸化力強い人参が抗酸化力の数値が大きくないのは、このためである。
②DPPHラジカル法では固形の試料は、溶液にする必要があり、その際には通常、50%エタノール溶液で野菜を破砕して、成分抽出液をつくる。ビタミンCは非常に強い抗酸化力のある物質であるが、エタノールでは抽出されにくいといわれている。栄養価コンテストではビタミンCの項目を別に設けて対応している。

多くの動物はビタミンCを自力でつくることができるが、人間は作れない。